ドーナツ一筋20年以上。デザイン系専門学校で学んだ経験を活かした斬新なカラーリングと、豊かな感性から生み出されるオリジナルドーナツ作りを得意とされています。手で一つひとつ丁寧に作り上げる昔ながらの製法にこだわり、新商品開発にも意欲的。「人型のドーナツ用型抜きを眺めていたら趣味の柔道の事が頭に浮かんで、柔道着ペイントチョコドーナツを作りました。それを仲間が凄く喜んでくれて。オーダードーナツの原点かもしれません」とお話して下さる姿はとても凛々しく、お茶目で、優しい眼差しが印象的。社長さんのドーナツへの深い愛情は、強い信念や熱意となり美味しさに繋がっているのだと感じました。
どーなつあんどどーなつドーナツあんどドーナツ
Interview No.4

■取材日:2016年1月19日
会社概要
2009年の開業以降、口コミで話題の人気ドーナツ店。店頭にはプレーンな揚げドーナツのほか、ヘルシーな焼きドーナツや日替わりドーナツなど常時40種類が並ぶ。イートインも可能で、癒しの空間と豊富なドリンクメニューでカフェとしても楽しめる。時間と手間を惜しまず店内で一つひとつ丁寧に作られるドーナツは個人店ならではのオリジナリティが沢山詰まっている。区内イベントへの出店、ショッピングモール等への期間限定催事、雑誌・メディアへの出演など幅広く展開している。




お店の名前を決める時、読みを「ドーナツ」と「ドーナッツ」で迷ったり、お洒落な英語表記等も考えましたが、最終的には「ドーナツ屋だと一目見て分かりやすいに越したことはない!」と、ひらがなとカタカナの組み合わせになりました。その後、デザイナーさんとお店のコンセプトを詰めて行く中で、「“あんど”は“安堵”」にもかかっていて良いね!との発想が加わり、可愛くて優しい現在のロゴが完成しました。
また店内の空間デザインも重要視しています。テーマカラーはホワイトで、シンプルかつナチュラルなインテリアにしました。狭い店内ながらも、間接照明や天井の高さ等で少しでも広く感じて貰える様に工夫しました。その結果“お洒落で居心地の良いお店”との評判にも繋がり、女性のお客さまが沢山来店して下さいます。
今でもお店のイメージと空間づくりは大切にしています。
「本当はコツコツ作っているガンプラを店内に飾りたいんだけど…ダメなのは分かってて…」と苦笑いの社長さん。「フィギュアに詳しいスイーツ男子が増えてくれたら嬉しいな」と照れ笑いされていました。


どうしてドーナツ屋になったのかは自分でも不思議ですが、思えば四六時中ずっとドーナツの事を考えています。それで自然と生業となったのかもしれません。大手で修行していた頃は作業効率の良さが重視され、誰でも同じ物が作れるオペレーションが確立していました。その時得た経験や知識は現在「個人店」として「オリジナル商品」を作る中で、とても役立っています。嬉しいことに、当時お世話になった同業の方々が「ドーナツあんどドーナツ」の味を求めて来てくれて「現在でもこの製法で出しているお店は少ない」と喜んで下さいます。
大手での経験があってこそ、手作りならではの「美味しい!」を伝え続けることが大切だと痛感していますし、昔の職場環境や仲間には本当に感謝しています。
NO.1 あんドーナツ
(シュガー・きなこ・黒ごま)
価格:160円(税抜)
NO.2 グレーズリング
価格:130円(税抜)
NO.3 焼きドーナツ
(小松菜&お味噌・かぼちゃ・バナナ・他)
価格:160円(税抜)

実は開業当初メニューにはありませんでした。お客様からの「あんドーナツ無いの?店名でしょう?」の声から誕生し、大ヒットとなった“目から鱗”の商品なんです。イースト発酵をさせた生地のもっちりとした食感と、風味豊かな小麦の香り、甘さ控えめのあんことの相性が抜群の商品です。生地の発酵時間がかかるため、一日に出せる数が限られていますが、ぜひ食べていただきたい一品です。


業界では機械による大量生産や冷凍生地の使用が主流ですが、当店では生地を型で一つひとつ抜く、手作りの製法を守っていることが最大のこだわりです。そうは言っても、どうこだわっているのかより『ドーナツを一口食べて「おいしい!」が全ての答え』と思い作り続けています。
新商品の開発では、日々研究を重ねています。当店ではまず思い付いた品を作り、名前を決める前に日替わりメニューの「きまぐれドーナツ」として店頭に並べます。その後、売れ行きやお客様の反応、ネットの口コミ等で手ごたえを感じたら、名前を付け、晴れてレギュラー入りとなるのです。これはドーナツ職人として何よりの楽しみであり、個人店ならではの醍醐味です。アイデアが形になり、人気商品として成長していくのを日々感じることができるのは、何よりのやりがいとなっています。
「きまぐれドーナツ」から生まれた最近の人気メニューは迷彩ドーナツ(抹茶・キャラメル・ストロベリー 価格:180円税抜)です。ピンクが女子高生に大人気となり驚きました。

当店のFacebookから、有名歌手のミュージカル公演の差し入れのご注文いただいたことがありました。メッセージを一つ一つドーナツに入れて欲しいというご依頼品でしたが、それをインスタグラムで公開して下さり「オーダードーナツ」の知名度が広がったという経緯があります。
また一日中仕事をしながらでも、スマートフォンで写真を撮り手軽に公開できるのも魅力です。Twitterも併用しているので、随時更新を心掛けています。
更に、女優活動をされているお客様がファンになってくださり、現在コラボでTwitterでの宣伝活動も行っています。今後もPR活動の一貫としてITツールを上手に活用していきたいと思います。


イベント出店時は特に「質」と「量」のせめぎ合いです。ドーナツは天ぷら等の揚げ物と同じで、時間が経つと味が落ちてしまうので、可能な限りできたての「美味しい状態」で食べていただきたいのです。そのため、イベント時には作り切り・売り切り分のみを提供するようにしています。また、出店準備は店舗営業終了後に即、仕込みを始めても12時間はかかるので、作れる量が限られているのが現状です。
「江戸川区民まつり」や「えどがわ美味いもの祭り」のほか、ショッピングモールでの限定出店なども行っていますが、早い時間帯に売り切れてしまうことも多く、申し訳ない限りです。イベントなどでお買い求め頂けなかった方は、ぜひお店へ足を運んで頂けたら嬉しいです。

せっかく江戸川区でお店を構えたので、この地ならではのドーナツを作ろう!と開発に取り掛かりました。地元民ではなかった私は、江戸川区の小松菜が有名と知ってからも区産小松菜の販売場所が分からず、原材料調達の時点から苦労しました。また小松菜をどのようにドーナツに取り入れるかも研究の連続でした。「揚げ」では、小松菜特有のエグミを消すことが難しく「焼き」に転向。

試行錯誤の中、他の素材と合わせることで小松菜の良さが引立つことに気付き、足掛け3年で商品化に至りました。他所から来たからこそ、とことん調べて、何とか江戸川区に根を張ろうという思いが強かったのかもしれません。現在では焼きドーナツのバリエーションも増え、多くの方から支持を得ています。
-
「美味しかったから、また来ますね!と声をかけて頂くのが何よりの糧なんです」と奥さま。
ハキハキとした接客姿と、とてもキュートな笑顔が印象的です。ホール業務の他に、製造ヘルプや経理など、オールマイティーにお仕事をこなされているそうです。 -
清々しい清潔感が漂う店内。
カフェスペースは洗練されていて、大きな開閉式の窓ガラスでさらに開放的に感じます。
各種雑誌や子ども用の絵本が置かれ、ついつい長居してしまいたくなる居心地の良い空間です。 -
子連れのママさんや、近所の子どもたちも多く来店されるとの事。トイレは広々として使いやすく、オムツ替えに便利なベビーシートや専用のゴミ箱もあります。社長さんと奥さまは3人のお子さんを育てるパパとママ。その目線ならではの細やかな気配りが店内の随所に見られます。

「ドーナツあんどドーナツ」のコンセプトはそのままに、こだわりの味をより多くの方へお届けしたいと思っています。事業継承には時間がかかると思いますが、いずれは2号店をと、現在加盟店オーナーを募集しています。また、我が子たちが継いでくれる時が来るかもしれないと少し期待もしています。今でも、家族で試食会をすると「チョコの量が足りないよ。」「トッピングはこんな感じどう?」「こっちの味が合うんじゃない?」とアドバイスをしてくれるんです。そんな会話の中から、日々の活力やアイデアが沸いてきます。時代の流れや季節に合わせ、世界にここだけのドーナツをもっと作って行きたいと考えています。
手で作るドーナツは正直物凄く大変な作業を要しますが、手の温もりや良さを大切にしたいですし、それこそが「ドーナツあんどドーナツ」らしいやり方だと、ずっとそこにこだわって、作り続けて行きたいです。
ドーナツあんどドーナツの皆さま
「えどがわ産業ナビ」インタビューにご協力頂き、本当にありがとうございました。
インフォメーション

- 所在地
- 東京都江戸川区松島2丁目39-18
ニコーパークハイム新小岩1階 - 最寄り駅
- 都営バス・京成タウンバス
『江戸川区役所前』下車、徒歩2分
徒歩/JR新小岩駅南口より徒歩20分 - 電話番号
- 03-3656-1142
- 営業時間
- 10:00~18:00
- 定休日
- 日曜・祝日・年末年始
- ホームページ
- http://www.donutanddonut.com/
「夫婦で写真撮るなんて恥ずかしいですよー!毎日一緒に仕事してると、それなりの距離感が必要じゃないですか…」の言葉とは裏腹に、終始アイコンタクトを取りながら仲良くお話されている姿はとても素敵でした。